東京高等裁判所 昭和27年(う)1303号 判決
弁護人は賍物罪の訴因追加は時期に失しており憲法第三七条に違反すると主張する。
昭和二十四年六月六日の本件犯行について公訴の提起があつたのは同年六月二十八日であり甲府簡易裁判所がこれを窃盗罪と判断し、第一審の判決をしたのは同年九月十四日であつたが右判決は昭和二十五年四月二十日の東京高等裁判所の判決によつて破棄され、その後窃盗又は賍物寄蔵罪として甲府簡易又は甲府地方裁判所に於て第一審としての審理を進めている中昭和二十七年一月二十七日の原審第九回公判廷に於て、検察官から賍物運搬罪の訴因追加があつて即日結審するに至つたのであり、右訴因追加が判決言渡の直前に為されたこと記録上明白である。しかし公訴事実の同一性を害しない限度に於て訴因を追加することは適法であり、この訴因追加により被告人の防禦に実質的に不利益を生ずる虞があると認められ被告人の防禦準備のため必要な期間公判手続を停止するような場合は格別、かかる事実の存しない本件に於て、判決言渡に接着する公判期日に於て訴因の追加があつたとしても、それ故に直ちに審理を遅延せしめたことは認められないから、迅速な公開裁判を受ける被告人の権利を害したといえない。
従つて憲法第三七条に違反する旨の所論は採用できない。
(注 本件は事実誤認により破棄自判)